基礎練習についての考察

初心者から上級者まで、基礎練習は欠かせないものだと思います。ではその基礎練習とは何でしょうか。

 

ロングトーンは1つの音をキレイに伸ばせるようにする練習で、スケール練習はそのスケールを覚えて自由に使えるようにする練習で、タンギング練習は…オーバートーンは…

 

と、その練習内容によって効果は様々だと思います。が、それらは全てある1つのことに向かっています。

 

それは、『思ったことを演奏できるようにすること』です。『思ったこと』とは『音・歌そのもの』のことです。前回の記事と繋がってますのでお読みください。

 

ジャズにおけるアドリブ考察

 

例えば、ロングトーンはただ音を伸ばす練習ではないことはわかっていると思います。音のアタックがキレイに鳴っているか、伸ばしている最中に音が揺れていないか、音量は一定か、音の切りは丁寧か、など、細かく挙げたらキリがありません。その細かなことを全て言葉にするのは大変で、無理があります。そこで必要なのが『音・歌そのもの』を強くイメージすることです。自分が思う完璧なロングトーンを頭の中で鳴らします。そしてそれと同じ音を出せばいいのです。

 

簡単に言いましたが、とても根気が要ります。自分が思う完璧なロングトーンと実際に出た音が全然違うのは当たり前です。ただ、細部までイメージすること、そしてそのイメージと実際に出した音とを照らし合わせてどこがどう違うかがわかれば、改善点が少しづつ浮き上がってくるはずです。問題点を自力で見つけることが上達の第一歩ではないでしょうか。

 

スケール練習も考え方は同じです。そのスケール練習のパターンを完璧に演奏しているイメージをして、それと同じように音を出します。それがタンギング練習でもオーバートーンでも同じことです。

 

ここまで、音・歌そのもの』をイメージすることを繰り返し伝えてきましたが、実はこれがかなりの曲者なのです。

 

 

初心者の場合、まだ楽器を吹く為の筋肉が出来ていなかったり筋肉の使い方がわからなかったりするので、ただ吹いているだけで発達・改善され、少し上手くなります。ここから先の上達にはイメージが必要不可欠となります。

 

しかし、イメージは本来とても曖昧なものです。イメージが弱い場合、実際に吹いた音を聴くことによってイメージがそれにすり替えられ、違いに気付かなくなります。様々なテクニックを身に付ける前に、イメージを洗練する必要があります。

 

例えば、初心者の「ドレミファソラシド(以下、ドレミ…)」と上級者の「ドレミ…」では全然違うはずですが、これはテクニック以前のイメージに大きな違いがあります。初心者が「ドレミ…」を演奏したとき、「出来た!」と思うでしょう。しかしそれは「ドレミ…」の音が鳴ったという意味で、上級者からすれば全然出来ているうちに入りません。逆に上級者の「ドレミ…」はとてもキレイで聞いている方にとってはもう十分だと思うかもしれませんが、その上級者にとってはまだまだかもしれません。

 

イメージと実際の演奏とのギャップは、のびしろです。テクニックは後からついてくるはずです。イメージを洗練することが上達への第一歩であり、もっとも重要なことなのです。

 

自然な歌を演奏する場合は、基礎練習はそれほど必要ではないかもしれません。なぜなら、もう頭の中で『音・歌そのもの』としてイメージ出来ているからです。しかしスイング・ビバップになると、なかなか歌うのが難しくなってきます。つまり、イメージするのが難しくなるのです。

 

 

基礎練習は、演奏に必要な要素を抽出し特化した練習と言ってもいいでしょう。ロングトーンは、音をキレイに伸ばすイメージを洗練させそれを演奏することに特化した練習。スケール練習は、規則的なスケールパターンのイメージを洗練させそれを演奏することに特化した練習。他の基礎練習も全部これです。要素を分けることによって自分の苦手なことがわかり、克服する手助けとなります。

 

演奏に必要な要素を抽出したものが基礎なら、基礎の複合が実際の演奏になるはずですが、そんなに単純ではありません。

 

要素の境目がはっきりしているわけでもなく、常にその要素が1つずつなわけでもありません。いくつもの要素が複雑に絡み合っていますし、要素と要素の間には分けきれなかった別の要素があるはずです。本来、実際の演奏を要素毎、あるいは名前の付いているテクニック毎に分けるのが無理のあることなのかもしれません。基礎練習と実際の演奏にはそれだけの差があります。

 

基礎練習には楽器をコントロールする為のものもあると思います。その場合、無駄な表情を付けず、なるべく均等に吹くのが基本です。言い方を変えると、表情のない『音・歌そのもの』をイメージすることになります。あくまでも基礎練習は、ただ決められた音をなぞるのではなく、歌わなければなりません。

 

基礎練習で『音・歌そのもの』をイメージせずにやっても、ただその基礎練習が出来るようになるだけで、実際の演奏に活かせません。例えばいくらスケールパターンを練習しても、そのスケールパターンの運指に強くなるかもしれませんが、歌としては出てきません。とても勿体ないことです。実際の演奏に活かすことを想定して、その前段階としてひとつの要素を抽出した基礎練習を、実際の演奏と同じように『音・歌そのもの』をイメージしながら演奏しましょう。

 

まとめ

・基礎練習とは、ひとつの要素に特化した練習のことです。

・実際の演奏と同じようにイメージし、歌いましょう。

  

 

基礎練習についての考察 おわり