「イメージすれば身体が付いていくよ」という指導法について

サックスのみならず楽器演奏において、出したい音を強くイメージして演奏すると身体が連動して動く、という話をよく聞きます。確かに私自身も、音を出すときはまず出したい音をイメージすると、もはや身体が勝手にそのイメージに近づけてくれます。しかしこれは、指導法としては本当に正しいのでしょうか。

“イメージに身体がついていく” のは、“そのイメージに対して身体をどう動かせばいいのかわかった上で無意識に反応できるレベルの人限定の感覚” だと思っています。なので、学習者へのアドバイスとしては、それだけでは全然足りません。

 

上手い人はイメージに対して身体が良い感じに連動しますが、学習者の場合は悪い方に連動してしまう場合も少なくありません。それがいわゆる“癖” です。

 

例えば高い音を出すときにどうしても強く噛んでしまう、などの癖がある場合は、“イメージに身体がついていく”とアドバイスしたところで、強く噛んでしまう“癖” を助長してしまうかもしれません。なぜなら、イメージとの連動に従おうとすると、どうしても強く噛んでしまうことになるからです。癖を直すためには、癖の原因を探り、改善策を講じる必要があります。

 

学習者自身が、「イメージしたら出せる」「でも強く噛んではいけない」「じゃあ何か他の方法があるはず!」と考えて模索してたどり着けばいいのですが、指導者が学習者全員にそれを期待してはいけません。

 

もちろん、イメージがなければ向かう目標がわからなくなるので、試行錯誤のしようがありません。出したい音を具体的にイメージすることは必要条件です。ただし、「イメージすれば身体が付いていくよ」だけでは、学習者に試行錯誤をさせることになります。その試行錯誤の負担を減らすために指導者がいるのではないでしょうか。

 

「イメージすれば身体が付いていくよ」だけではなく“イメージすれば身体が付いていくようにするためのプロセス” を考えるのが指導者の仕事だと考えます。