奏法の幅を広げること

サックス奏法の感覚を言葉で伝えるのはなかなか難しく、ましてや文章で伝えるのは至難の業です。ただ、奏法に対する考え方を少し変えるだけで良い感覚を自分で探して掴むことができるかもしれません。

 

私は、サックスの奏法は正しい“点”があるわけではなく“幅”があるものだ、と考えています。

 

例えばマウスピースを咥える深さ。これは絶対的に正しい位置があるわけではありません。浅くても深くても、まずそれがリードの振動に影響し、音色やコントロールに影響します。良し悪しではありません。

 

浅く咥えたら、リードが反応しやすくなりますが、フォルテや高音が出しにくいかもしれません。

深く咥えたら、息のスピードや圧力がより必要になるかもしれません。

 

それならそれに対応できるように、息の入れ方、ブレスの仕方、ブレスに必要な筋肉の使い方、息の量、口腔内の形、舌の形、姿勢、などなど、それに合わせて柔軟に変化させてみましょう。

 

また、浅く(深く)咥えると決めたらずっとそうしてなければいけない決まりもありません。出したい音に対して柔軟に対応していいのです。

 

大切なのは、何が何に影響するかを考えることです。音色やコントロールなどに影響する何かが変わらなければ、いくらロングトーンやオーバートーンなどの基礎練習をしても、結果は変わりません。

 

基礎練習を続けることで徐々に良い方向に変化していくことも、もちろんあります。しかし、“いつもの吹き方”に固執してしまうと、コツコツ練習しても奏法に幅ができません。

 

アンブシュアを固める、という表現を目にすることがありますが、あまり良い表現とは思えません。環境やリードのコンディションなどによって、柔軟に変えるべきだと思うからです。

 

その為には、何をどうしたらどうなるのか、色々試して感覚と知識を蓄積しましょう。

 

遊び感覚で、いつも絶対にやらないことをやってみるのも、意外な発見があったりします。

 

例えば、大袈裟に下唇を突き出したファットリップにしてみるとか。それで音が安定するように息の量やスピード、圧力など色々対応させてみると、いつも使ってない筋肉などを意識できるようになるかもしれません。

 

コツコツ基礎練習をするのはもちろん大事です。それに加えて、奏法は柔軟に変えられるという意識を持ち、いつもと違う奏法を研究し、(ときには遊び感覚で)、どんどん幅を広げていきましょう。