アドバイスを貰うとき

先輩、先生、(ときにはよく知らないおっさんに…)アドバイスをもらうことはあると思います。それはとても有難いことなのですが、どうもよくわからないことがあります。大抵のアドバイスは、「もっと◯◯すると△△になるよ」くらいなものです。手段と結果だけなのです。結果がちゃんとしてればまだいいのですが、「◯◯すると良いよ」とか言われることもあります。こういったアドバイスをどう受け取ればいいのでしょうか。

 

この場合の◯◯とは、その人が練習する中で特に意識したことです。△△はそれに伴って変化したことのほんの末端の結果です。

 

例えばよく言われるやつ

「口の中を広げると音が太くなる」です。

「口の中を広げる」が手段で、「音が太くなる」が結果です。その人はそうだったのでしょう。しかし、「口の中を広げる」だけでは音は太くなりません。手段と結果の間には沢山の変化があります。

 

「口の中を広げる」と、広げていないときと比べて、息のスピードが減少します。ちょうど、ホースから水が出ているところをイメージしてください。水の供給量は変えずに、ホースの口を摘んで細くすると水の勢いが増します。離すと減ります。これが口の中でも起こります。息のスピードが遅くなると、リードが反応しなくなります。リードを反応させなければ音が鳴りません。

 

そこで今度は、息の供給量を増やします。ホースで例えると、蛇口をひねって水の量を増やすようなことです。これで、口の中を広げつつリードが反応するのに必要な息のスピードも出すことが出来ます。

 

息の量が多くなるので、それをスムーズにマウスピースに通す為に、唇の力を緩めたり、深く咥えたりします。すると、リードの振動部が広くなります。リードの振動部が広くなると倍音が増えます。結果、「音が太くなる」のです。もちろん大きくもなります。

 

これが「口の中を広げると音が太くなる」の正体です。これでも私の考えが至った範囲内の話です。このアドバイスを言った人は、「口の中を広げる」ことは自分で意識してやったのでしょう。しかしそれに伴って起こる変化は、練習を重ねるうちに無意識に少しずつ変化したのでしょう。だからそこを伝えることができません。このアドバイスを鵜呑みにして口の中を広げるようにしても、その次の変化が全員に無意識に起こるとは限らないのです。息のスピードが減少したところで先に進めなくなる人もいると思います。

 

言ってしまえば、「風が吹けば桶屋が儲かる」くらいのことなのです。しかしアドバイスを受ける側は、学習者という立場であり、自分より上手い人(あるいは目上の人)にアドバイスを貰うと、それを鵜呑みにするしかないのです。

 

こういったアドバイスを貰ったときに、どう考えればいいのでしょうか。

 

アドバイスを言うには、それなりの動機があるはずです。例えば 「口の中を広げると音が太くなる」というアドバイスは、その前に「音が細いな」と思ったのでしょう。まず音が細いと思って、その改善策の一つの手段として、「口の中を広げる」と言ったのです。ここを見極めましょう。そして考えます。自分の音は細いだろうか。細いとして、太くしたいだろうか。そして、もっと太くしたい、と思って初めてアドバイスの中の手段について考えます。細いままで良ければそのアドバイスは必要ありません。それから先程の例のように、手段によってどのような変化があるか考えましょう。その手段を実行するだけで全てが上手くいくとは思わないことです。

 

今後、アドバイスを貰う機会があると思います。そのときに、まずそのアドバイスに至る動機、そしてそのアドバイスの手段と結果の間にある変化をよく考えてみましょう。アドバイスが有益なものになるかどうかは、考え方次第です。